第37代理事長 増田 雄也

「平成」の世が幕を閉じ、2019年5月1日の午前0時、「令和」という新しい時代の扉が開かれました。令和とは人々が美しく心を寄せあうなかで文化が生まれ育つという意味が込められています。地に根付く文化伝統を育み、夢や希望に満ちあふれた新しい時代の一歩を力強く真っすぐに踏み出すことが、私たち青年の責務であると考えます。

はじめに

 日々、生活していると色々なことが「当たり前」になってしまいます。愛する家族がいること。苦楽を共に出来る仲間がいること。愛する故郷に住み続けられていること。当たり前のことが当たり前と感じられている今は、実はかけがえのないものなのです。今がある事に心からの感謝の念を抱くことを私たちの始まりとしたいと思います。

 日本は今、急速な高齢化、少子化の流れによる人口減少、相次ぐ自然災害、高度経済成長期に集中的に整備されてきたインフラの老朽化等、様々な問題を抱えています。私たちの住む榛南地域も例外ではなく、都市部に比べより深刻な状況が訪れようとしています。そんな今だからこそ青年会議所の存在価値があるのではないでしょうか。青年会議所は、20歳から40歳で構成される青年団体です。私たちには若さがあります。若さは力であり、行動力・発想力の源です。また、私たちにはつながりがあります。どんなことも共に乗り越えていくことが出来る同志とのつながり、叱咤激励をいただける諸先輩方や地域の皆様とのつながり、縦にも横にも伸びるこの太いつながりも青年会議所の強みだと考えます。一人一人が地域の現状と本気で向き合い、私たちの持つ強みを最大限に活かし、榛南青年会議所だからできる、榛南青年会議所にしかできない運動を展開していきましょう。

地域を担う人財の育成

 私たちが取り入れる単年度での運動は、地域の現状を変える即効薬にはならないかもしれません。しかし、榛南青年会議所だからできる、榛南青年会議所にしかできない運動を継続的に展開していくことこそが、この地域の特効薬になると私は信じています。そのためにも、未来を担う人財の育成が最重要課題であると考えます。

榛南青年会議所はここ数年、在籍年数の浅いメンバーの割合が増えて来ている事と同時に私たちの運動の基礎を学べていないという現状があるのではないでしょうか。基礎とは、物事を成り立たされるための元となるものであり、土台であるという意味があります。どんなに見た目が立派な家を建てても、基礎がしっかりしていなければ、しだいにその家は足元から崩壊していってしまうはずです。スポーツや勉強、私たちの運動にしても共通して必要な事は基礎を学ぶ事だと思います。基礎を学び始めて新たな挑戦ができるようになります。逆に言えば基礎を学ばない限り何もできません。一年を通し運動の土台となる基礎を学ぶ様々な機会を創出していきたいと思います。

また、青年会議所には多種多様の業種を営む、様々な個性を持った約34,500人もの仲間が在籍しており、自分が求めればそこには様々な人との出会いが待っています。人は人によって磨かれるという言葉にもあるように、出会いが、多くの刺激や気付きを与え、人は磨かれます。個々の見識を更に広げていくためにも、新たな仲間との出会いの機会や、メンバーが足を運びやすくする雰囲気づくりが必要です。

地域の特効薬となるために

 榛南青年会議所だからできる、榛南青年会議所にしかできない運動を継続的に展開していくためには熱い想いを持った同志の存在が必要不可欠です。私が拡大委員長を担ったとき決めた基本方針があります。想いが数へ、数が力へ、力が変革へ。想いこそが自分を成長させ人を惹きつける。熱い想いを持った同志が増えれば増えるほど私たちの声は大きくなり力となる。力を携えた私たちだからこそ地域変革の運動を展開できるという考え方です。今でもこの基本は変わっていませんが、あるときこんな言葉と出会い感銘を受けました。「想いは手法の上流にある。」どんなに技術があろうが、どんなに知識があろうが、そこに想いがないと伝わらないという意味です。しかしこの言葉には続きがあります。

「しかしながら手法なき想いは無力である。」想いだけがあっても駄目だということです。地域に伝え、共感を得ていくためには想いと同じくらい新しい価値観、新しい視点を常に取り入れていかなければいけないのです。そのためにも会員拡大は榛南青年会議所にとって必須であります。一人でも多くの同志を迎え入れるべく、私が先頭となり、全員拡大を推進していきたいと思います。

組織マネジメント

 組織運営の在り方も時代の変化と共に改善していかなくてはなりません。よくありがちなJCのためのJCをやるのは本末転倒であり個々のモチベーションは下がる一方になっていってしまいます。前例や習慣や固定概念ばかりにとらわれる必要はありません。組織運営とは、私たちが最大限のパフォーマンスを発揮するための環境や仕組みを創り出していくことなのだと思います。守らなければいけないものはしっかりと守り、個々のモチベーションの向上や組織の活動が円滑に実行できる仕組みを探求していきましょう。

 また、ネット上には情報が溢れ、全国各地の市町村や各種団体で様々なまちづくりが展開されている現代において、青年会議所そのものに共感してもらえる仕組み作りと情報発信を行うことはとても重要なことです。広報活動によって地域の皆様に私たちの運動への理解や共感を得ることは、地域活性化につながるだけでなく会員拡大にもつながります。今後、ますます加速が予測される会員減少の時代に、効果的な広報活動によって青年会議所の魅力や運動を発信することは、地域に支援者を増やし、団体の価値を更に上げる重要な活動であると言えます。メンバーやOBの皆様へのスムーズな情報共有、様々なツールを駆使し地域へ魅力ある情報発信を展開していきましょう。

地域の未来を担う人財の育成

 近年少子化は着実に進行しています。働き方や生活スタイル、家族の単位は時代と共に変化し、核家族も増加しています。世代間を超えた地域交流の機会は少なくなり、人間関係の希薄化にもつながっているといえるのではないでしょうか。また、インターネットの普及や多種多様な習い事、子どもの防犯・安全意識の向上による制約、様々な原因により子どもたちが外で無邪気に遊んでいる光景はあまり見られなくなった様に感じます。私たちが子どもの頃は、インターネットも携帯も普及しておらず、毎日友人たちと、外で日が暮れるまで走り回っていた記憶が残っています。遊びの中で人間関係や自然の美しさ、怖さを学び、学校や家庭以外でも地域の大人が地域の子どもたちを温かく見守り、時に厳しく教育してもらえる環境があったからこそ自然と人間形成の基礎が培われてきました。この環境があったからこそ、私たちは今、愛する郷土に住み暮らし、郷土の未来を考え運動を展開しています。子どもたちを取巻く環境が変わっても、榛南地域には豊かな自然、温かい人、素晴らしい文化伝統が、今も変わらず存在しています。子どもたちには榛南地域が持つ魅力の素晴らしさを伝え、郷土を愛する気持ちを育むことこそが地域の未来を担う人財への成長につながると確信します。

 子どもの頃のワクワクやドキドキした体験は、カタチには残りませんが、記憶に残ります。それは大人になり、ふとした時に思い出し、心を温めてくれる大切な宝物になるはずです。子どもたちの心に残る魅力ある事業を展開していきましょう。

未来のカタチ

 全国各地の各市町村や各種団体がまちづくり運動や様々なイベントを開催しています。日本の今後予想される人口減少という大きな問題に様々な人が危機感を持ち始め、何とかして郷土を守っていきたいという気持ちの表れだと思います。静岡県内でも様々なまちづくり運動は展開されています。しかし、人口は現在372万6537人、前年比で1万6478人の減、人口の減少幅は全国でワースト5となってしまっています。この現状に明るい兆しを見出すために、私たちは何をすればいいのでしょうか。榛南青年会議所はこれまで、諸先輩方が、壮大な夢を描き夢の実現のため、様々な運動を展開していただいた結果が富士山静岡空港を榛南の地に誕生させることにつながりました。富士山静岡空港が開港し、今後、新東名高速道路の開通や、御前崎港等の港湾機能が強化され、高度な陸・海・空を結ぶ交通インフラが形成されようとしています。富士山静岡空港は榛南地域のみならず、静岡県の産業・文化・観光の重要拠点となっています。また昨年展開したIR(統合型リゾート)誘致運動は、迫りくる人口減少がもたらす負のスパイラルからの脱却、榛南地域の魅力と魅力をつなぐ新たな拠点の創出、更には静岡県全体の産業や観光の向上につなげるために他団体と協働し運動を始めました。地域には賛否両論の多くの意見が飛び交っていました。賛成にしても反対にしても様々な意見が出るということは、それだけ地域の事を真剣に考えているからだと私は思います。一人一人が地域を想い、本音で意見をぶつけ合い、より良い方向に進めていくことがまちづくりには必要です。誘致までのハードルは非常に高く反省点は多々残りましたが、この運動は地域内外に大きなインパクトを与え、今後のまちづくりの礎になると確信します。

 私たち青年会議所は壮大な夢を描くと共に地域の現状や、まちづくり運動の必要性を地域に明確に伝え、行政や他団体、一人でも多くの地域住民を巻き込んだまちづくり運動を展開していかなくてはいけません。榛南の未来のカタチを地域の皆様と共に作り上げ、明るい豊かな社会の実現に向け突き進んでいきましょう。

結びに

 私は榛南青年会議所に入会して良かったと心から思います。20歳~40歳という自分の人生の中で重要となる時期に、違った価値観を知り学び、尊敬できる先輩に出会え、かけがえのない友と巡り会えたことは私の宝です。また青年会議所は私を強く熱くしてくれました。地域のために、家族のために、仲間のために、自分に今何が出来るのだろうと真剣に考えるようになりました。榛南青年会議所の仲間は皆本気です。この仲間が居ればどんなことへも挑戦できる。どんな壁も乗り越えられる。私たちの本気を地域に伝えよう。

本気は伝わる ― 真っすぐに ―

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